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 その財布は、親からの誕生日プレゼントだった。

しっかりとした牛革で、黒色。デザインもシンプルで

紺と紅色のラインが縦に1本はしるのみ。

深い2つ折りになっていてカードもたくさん入るし

コイン入れのがま口の部分もとても開きやすい。

手触りも良いし、ほとんどほころびはない。

そんなとても優れた財布ではあるが

たった一つだけ、残念なところがあった。

 

 全くもって、好みではないのだ。

 

 親孝行のつもりで使ってはいたけれど

その財布を手に取るたびに、ちょっとだけがっかりする。

あまりにも、あまりにも好みじゃなさ過ぎるのだ。

「早くこわれて使えなくならないかな」

そう思い続けてはや10年。

落としてもなくしても、何故か確実に私の元に返ってくるその財布。

おりをみて買い直そうと思い続けて、今に至ったのだ。

 

 そして、いよいよその時がやって来た。

がま口の部分があまくなってしまったのだ。

 

 やった!いよいよこの呪いの財布からの解放だ。

ありがとう財布。ごくろうさま財布。

とても使い勝手が良かったよ。そう、いい子だった。

ただ、私が愛してはいなかっただけで。

 

 空き時間、私は好みの財布を捜して店から店へ渡り歩いた。

本皮の、ちょっとクラクラする匂いが立ちこめる店の中

好みの財布をチョイスする。

「薄茶かな?縦長かな?」

まだ見ぬ理想の財布を想い。

10余年、私の事を待ち続けたであろう

その子に出逢うために。

 

 そして

 

 私の財布は黒色。

デザインもシンプルで紺と紅色のラインが縦に1本はしるのみ。

10年ものの皮にそぐわない、ピカピカのキツいがま口をしたがえて。

 

 好みじゃない。全く好みじゃない上に

がま口の違和感丸出しで、さらにがっかりなこの財布のがま口を

私は、またいつの日か直す日が来るのだろう。

その時もきっと、これでもかというほどの苦笑いと一緒に

この、好みじゃない財布と、それに詰まった

直したはずのがま口がしまらないほどの幾重の想いを

胸に抱くのだろうな。

 

 

 

*某エッセイコンクール入選作品。

 …が、

 オフで友達に読んでもらうと100発100中

 「…で、どんな財布を買ったの?」と聞かれます…

 あまつさえ

 親に見せたら「気に入らないなら捨てればいいでしょーーー!」と

 泣かれる始末…orz

 

 …文章の練習でもすっかなぁ(;_;)…

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オフで友達が読んだら「ワケわからん」と言われます…orz
分りやすい文を書けるようにならんとね…(;_;)
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