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分りやすい文章を書けるように ちょっと努力してみる。
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 軽く茶髪のさらさらヘアで

ザクッと乗り込んで来た彼は
大股で風を切るのに
不思議と威圧感はなく
スリムなのに身体の動きの流れで
筋肉質なのが見て取れる。
スタンと斜向いの座席に腰を下ろした。

その節くれ立った指で
がっぷりと大きい鞄から
一冊の文庫本を取り出す。
焦茶の細いしおりをつまみ
残り3分の1ほどのページに目を落とす。

その瞬間、彼の目の輝きが変わる。
小説に引き込まれた彼は
多分、周りの騒音も耳に入らない。
はは。夢中になると
口が半開きになるんだね。 

日の光の色が変わった頃
彼は後ろ姿を見せた。
ドアが開き光の中に吸い込まれる彼を
ただ見守る私は、てんでへたれ。
この出会いが運命なんかじゃない事は
哀しくなるほどわかっている。
 
気付けば、私が降りるべき駅から3駅ほど乗り過ごし。
それからもう2度と、その半開きの口を見る事はなく。

むかしむかしの西武線。
光の中の練馬駅。 

 

*文章課題:ひとめぼれ

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ある日から、私の中に、マトはずれな神様が住みついた。

その神様は、たいそう的外れで、でも

私が本当にピンチの時、ふわっと幸せな何かを運んで来てくれる。

 

明日は私の人生がかかった審査。

世の中は普通に進んでいるけれど

私は一人、勝手に大パニック。

書類も提出され、私が手をこまねる事は何一つ出来ない。

そして何より、その関係者は誰ひとりとして私を応援していないのだ。

むしろ「オチロ」くらいな勢いで。孤立奮闘。四面楚歌。

 

でも、そんな事は覚悟の上。チョー平気。

景気づけに肉でも喰らおうと

「hotもっと」で3個入り唐揚げカップを買った。

食ってやる。私の弱気もすべて食い尽くしてやる。

 

「hotもっと」の帰り道、いつも祈る帰り道。

私は車のハンドル越しに

鳥居の上に掛かる木々を見上げ

失った私の大事な子をそれらに託す。

 

「神様。ばったを、お願いします」

「そして、出来る事なら、明日…」

 

その直後。

 

3個入りからあげカップには

からあげが4つ入っていた。

「いらねぇ!ばった、こんなにイラネェよ!!」

私は一人大笑いし、そして泣いた。

 

そうか。私は淋しかったのか。

 

底にたまった塩っけがキツい唐揚げを頬張って

神様が涙に気付かないように、私はまたハンドルを握った。

前に前に進むために。

そしてまた、マトはずれな神様に出逢えるように。

 

 

 

*ばった>愛鳥。昨年夏に永眠。



 その財布は、親からの誕生日プレゼントだった。

しっかりとした牛革で、黒色。デザインもシンプルで

紺と紅色のラインが縦に1本はしるのみ。

深い2つ折りになっていてカードもたくさん入るし

コイン入れのがま口の部分もとても開きやすい。

手触りも良いし、ほとんどほころびはない。

そんなとても優れた財布ではあるが

たった一つだけ、残念なところがあった。

 

 全くもって、好みではないのだ。

 

 親孝行のつもりで使ってはいたけれど

その財布を手に取るたびに、ちょっとだけがっかりする。

あまりにも、あまりにも好みじゃなさ過ぎるのだ。

「早くこわれて使えなくならないかな」

そう思い続けてはや10年。

落としてもなくしても、何故か確実に私の元に返ってくるその財布。

おりをみて買い直そうと思い続けて、今に至ったのだ。

 

 そして、いよいよその時がやって来た。

がま口の部分があまくなってしまったのだ。

 

 やった!いよいよこの呪いの財布からの解放だ。

ありがとう財布。ごくろうさま財布。

とても使い勝手が良かったよ。そう、いい子だった。

ただ、私が愛してはいなかっただけで。

 

 空き時間、私は好みの財布を捜して店から店へ渡り歩いた。

本皮の、ちょっとクラクラする匂いが立ちこめる店の中

好みの財布をチョイスする。

「薄茶かな?縦長かな?」

まだ見ぬ理想の財布を想い。

10余年、私の事を待ち続けたであろう

その子に出逢うために。

 

 そして

 

 私の財布は黒色。

デザインもシンプルで紺と紅色のラインが縦に1本はしるのみ。

10年ものの皮にそぐわない、ピカピカのキツいがま口をしたがえて。

 

 好みじゃない。全く好みじゃない上に

がま口の違和感丸出しで、さらにがっかりなこの財布のがま口を

私は、またいつの日か直す日が来るのだろう。

その時もきっと、これでもかというほどの苦笑いと一緒に

この、好みじゃない財布と、それに詰まった

直したはずのがま口がしまらないほどの幾重の想いを

胸に抱くのだろうな。

 

 

 

*某エッセイコンクール入選作品。

 …が、

 オフで友達に読んでもらうと100発100中

 「…で、どんな財布を買ったの?」と聞かれます…

 あまつさえ

 親に見せたら「気に入らないなら捨てればいいでしょーーー!」と

 泣かれる始末…orz

 

 …文章の練習でもすっかなぁ(;_;)…



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分りやすい文を書けるようにならんとね…(;_;)
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